全社数字だけでは見えないもの
複数店舗を運営する会社では、全社の損益で経営を見ていることが少なくありません。しかし全社が黒字でも、その中には稼いでいる店舗と赤字の店舗が混在していることがあります。
全社の数字だけを見ていると、好調店の利益が不振店の赤字を覆い隠してしまい、問題に気づけません。結果として、稼いでいる店舗の努力が別の店舗の穴埋めに消え、会社全体の成長が止まってしまいます。店舗別に採算を分けて見ることが、この状態を打破する第一歩です。
店舗別採算の把握は、不振店をあぶり出すためだけではありません。好調店の成功要因を見つけ、他店に広げるためにも役立ちます。
店舗別に損益を分ける
店舗別採算の出発点は、売上と費用を店舗ごとに分けて損益を出すことです。売上は店舗ごとに分かりやすいですが、費用の配分には工夫が要ります。
店舗別損益で押さえる点
- 各店舗の売上を明確に区分する
- 店舗に直接かかる原価・人件費・家賃を割り当てる
- 本部費など共通費は合理的な基準で配分する
- 店舗ごとの利益と、全社への貢献度を見る
共通してかかる本部費用などをどう配分するかは悩ましい点ですが、完璧を目指すより、まず大まかにでも店舗ごとの姿をつかむことが大切です。おおよその損益が見えれば、どの店舗に問題があるかが分かります。
店舗ごとの違いを分析する
店舗別の損益が出たら、なぜ差が生まれているのかを分析します。同じ看板を掲げていても、立地、顧客層、人員、運営の質によって採算は大きく変わります。
好調店と不振店を比べ、売上の違いなのか、原価や固定費の違いなのか、稼働率の違いなのかを掘り下げます。この分析によって、不振店の課題と好調店の強みの両方が見えてきます。単に赤字を責めるのではなく、原因を突き止める姿勢が改善につながります。
不振店の課題を見極める
不振店には、それぞれ固有の課題があります。一律の対策ではなく、各店の事情に合わせて課題を見極めることが重要です。
- 売上不足なのか、コスト過多なのかを切り分ける
- 立地や商圏に構造的な問題がないか確認する
- 運営の質(接客・提案・稼働)に改善余地があるか見る
- 人員配置や店長のマネジメントに課題がないか確認する
課題が運営面にあるなら改善で立て直せますが、商圏そのものに構造的な問題があるなら、より大きな判断が必要になることもあります。課題の性質を見極めることが、次の一手を決めます。
好調店の強みを横展開する
店舗別採算のもう一つの価値は、好調店の成功要因を見つけて他店に広げられることです。好調店がなぜ稼げているのかを分析し、その仕組みを不振店にも取り入れます。
接客や提案の方法、稼働率を高める運用、集客の工夫など、好調店の強みを標準化して横展開することで、会社全体の底上げが図れます。好調店の横展開は、複数店舗を持つ会社ならではの強みを活かした収益改善策です。
改善と判断を段階的に進める
不振店の立て直しは、期限と目標を決めて段階的に進めるのが現実的です。まず運営面の改善に取り組み、その効果を見ながら次の判断をします。
改善に取り組んでも好転しない場合は、縮小や統合、撤退といったより大きな判断も選択肢に入ります。ただし、そこで働く従業員や地域の顧客への影響も考慮する必要があります。感情に流されず、しかし人への配慮を忘れず、段階的に判断を進めることが大切です。
店舗別管理を仕組みにする
店舗別採算は、一度出して終わりではなく、継続的に把握し続けることで真価を発揮します。定期的に店舗ごとの数字を確認し、変化に早く気づける仕組みを整えましょう。
- 店舗別の損益を定期的に確認する
- 店長が自店の数字を把握し責任を持つ体制にする
- 好調・不振の変化に早く気づける仕組みをつくる
- 数字を各店の改善に活かす場を設ける
店長自身が自店の採算を意識するようになれば、現場主導の改善が回り始めます。これは社長一人に頼らない、仕組みで回る経営への一歩でもあります。
注意したいこと
店舗別採算を導入する際は、数字だけで店舗や店長を評価しすぎないよう注意が必要です。立地や商圏の条件が異なる以上、単純な比較は不公平になることもあります。条件の違いを踏まえた公平な見方が求められます。
また、費用配分の基準が不透明だと、現場の納得を得られません。どのように損益を分けているかを分かりやすく説明し、改善に前向きに使える形にすることが大切です。
本部と店舗の役割分担を整理する
複数店舗を運営するうえで、本部と各店舗の役割分担が曖昧だと、責任の所在が不明確になり、採算管理も機能しません。何を本部が担い、何を店舗に任せるかを整理することが、店舗別採算を活かす前提になります。
仕入れや価格の方針、人材の育成などを本部が支え、日々の運営や顧客対応は店舗が責任を持つといった分担が一例です。店長が自店の数字と運営に責任を持てる範囲を明確にすることで、現場主導の改善が回り始めます。
- 本部が担う機能(仕入れ・方針・人材)を定める
- 店舗に任せる裁量の範囲を明確にする
- 店長が採算に責任を持てる体制にする
- 本部と店舗の情報共有の場を設ける
役割分担が整うと、社長が全店舗を細かく見なくても各店が自律的に回るようになります。これは多店舗経営を安定させると同時に、社長に頼らない仕組みで回る経営への一歩でもあります。
店舗間で学び合う場をつくる
複数店舗の強みは、店舗同士が学び合えることにあります。それぞれの店舗が別々に運営されているだけでは、この強みは活かされません。店舗間で情報や工夫を共有する場をつくることが、全社の底上げにつながります。
好調店の取り組みを他店に伝え、不振店の課題を全体で考える。こうした学び合いの場があれば、一つの店舗で生まれた良い工夫が会社全体に広がります。店長同士が刺激し合うことで、各店の運営の質も高まっていきます。
- 店長同士が定期的に集まる場を設ける
- 好調店の工夫を他店に共有する
- 不振店の課題を全体で考える
- 成功事例を全社の標準に取り入れる
店舗間の学び合いは、店舗別採算で見えた差を、全社の成長に変える仕組みです。競い合いだけでなく、支え合い高め合う関係が、多店舗経営を強くします。
まとめ
複数店舗の採算を店舗別に把握することは、全社数字では見えない不振店と好調店の姿を明らかにし、的確な手を打つための土台です。店舗ごとに損益を分け、違いを分析し、不振店の課題を見極めながら、好調店の強みを横展開することで、全社の黒字化につなげられます。店舗ごとの数字が見えることは、経営者が的確に手を打つための羅針盤になります。
改善と判断は段階的に進め、店舗別管理を仕組みにすることで、継続的な収益力の向上が図れます。店舗別採算の導入や不振店の立て直しに迷う場合は、自動車アフター業界に精通した専門家への相談が助けになります。