引退したい時期を決める
すべての起点はここです。いつ退きたいのかが決まらないと、逆算した準備ができません。
譲渡には、相手探しから引き継ぎまで半年から2年程度かかります。加えて、決算書や現場を整える期間を確保するなら、さらに1年は見ておきたいところです。「70歳で退く」と決めれば、67歳前後には動き出すという逆算ができます。
体調を崩してから動くと、時間的な余裕がないぶん条件面で妥協せざるを得なくなります。元気なうちに決めておくことが、結果的に手元に残る金額を増やします。
自社がいくらで評価されるかを知る
次に、現状で自社がどう評価されるのかを把握します。多くの経営者が「うちには大した価値はない」と考えていますが、実際に見立ててみると想定を上回ることは珍しくありません。逆に、思ったより低いこともあります。
どちらにせよ、数字を知らないまま検討を進めることはできません。決算書3期分と、認証・指定の書類、従業員名簿があれば、おおよその見立てをお伝えできます。無料でご案内していますので、この段階で費用の心配は不要です。
決算書と実態の差を埋める
買い手は決算書を見て判断しますが、その決算書が実態を映していないことがよくあります。社長個人の費用が経費に混ざっている、役員報酬が実態と乖離している、使っていない設備が資産に残っている、回収見込みのない売掛金が計上されている。
これらは説明すれば理解される項目ですが、説明できないと減額の対象になります。時間があるうちに整理しておくと、評価が変わります。
社長がいなくても回る状態に近づける
「社長がいないと仕事が止まる」状態は、買い手にとって最大のリスクです。見積もりの判断、顧客との交渉、職人への指示——これらが経営者の頭のなかにしかないと、譲渡後の継続性が疑われます。
すべてを仕組み化する必要はありません。顧客台帳を整える、整備履歴を残す、見積もりの基準を書き出す。この程度でも、属人性は目に見えて下がります。
秘密を守れる相手に相談する
最もやってはいけないのが、同業や取引先に「売却を考えている」と漏らすことです。噂は必ず広がり、整備士の離職や顧客の離反につながります。
相談は、秘密保持を前提に動ける専門家に限定してください。候補への打診は会社名を伏せた資料で行い、関心を示した相手とだけ秘密保持契約を結んでから詳細を開示する——この手順を守れる相手かどうかを確認しましょう。
よくある不安と、その実際
ご相談の場でよく伺う不安を3つ挙げます。
「従業員が辞めてしまうのでは」——株式譲渡では雇用契約は会社に残り、身分は維持されます。買い手にとっても整備士は貴重ですから、条件を下げる動機はほとんどありません。給与や役職の維持を契約に盛り込むこともできます。
「顧客が離れるのでは」——店名や営業体制を変えずに引き継ぐケースが多くあります。前経営者が一定期間残り、顧客へ紹介する形をとれば、離反はかなり抑えられます。
「安く買い叩かれるのでは」——複数の候補と並行して話を進めることで、条件を比較できます。1社だけと交渉しないことが、適正な条件を引き出す最も確実な方法です。
廃業と比べてどれだけ違うか
廃業を選ぶと、リフトや設備の撤去費用、廃油・廃棄物の処理、店舗の原状回復、従業員の退職金が発生します。土地建物が自社所有でも、更地にする費用は経営者の負担です。
売却であれば、これらの支出が不要になるうえ、事業そのものに対価がつきます。加えて、従業員の雇用と顧客の行き先も残せます。金額だけを比べても、売却が有利になるケースは少なくありません。
具体的な比較は廃業と事業承継はどちらが手元に残るかで扱っています。
引き継ぎ期間はどれくらい必要か
成約すればすぐに退けるわけではありません。顧客や取引先への紹介、現場の引き継ぎのため、前経営者が数か月から1年程度関与するのが一般的です。
この期間の役割と報酬は、契約のなかで定めます。「毎日出社する」のか「週に数日、顧客対応だけ」なのか、条件は交渉次第です。引退後の生活設計にも関わりますので、希望を早めに伝えておいてください。
こんなご相談を承っています
実際にいただくご相談は、次のような言葉で始まることが多くあります。
- 自動車整備会社を売りたいが、どこに相談すればよいかわからない
- 自動車整備事業を手放したいが、従業員の行き先が心配だ
- 整備工場の経営権を譲りたい。屋号は残してほしい
- 整備工場の買い手を探したいが、同業に知られたくない
- 子供が継がないので、後継者なしで整備工場の売却を考えている
いずれも、整備工場の売却支援としてお手伝いできる内容です。整備工場の顧客価値——つまり車検で毎年戻ってくる固定客がどれだけ評価されるかも、あわせてご説明します。
なお、自動車整備工場の引継ぎ期間は、成約後おおむね数か月から1年程度です。この間の関与の仕方も、ご希望をふまえて設計します。
決めていなくても相談してよい
ここまで読んで「まだそこまで固まっていない」と感じた方もいるかもしれません。それで構いません。むしろ、決める前に選択肢を知っておくほうが、納得のいく判断ができます。
売る、継がせる、続ける——どの道を選ぶにせよ、自社の現在地を知ることから始まります。秘密厳守でお話を伺いますので、お気軽にお声がけください。