企業価値はどう決まるのか

M&Aにおける企業価値とは、会社を譲り受ける側がどれだけの価値を認めるかを金額で表したものです。土地の路線価のように公式な一つの正解があるわけではなく、複数の考え方を組み合わせて評価されます。

大切なのは、企業価値は「資産の価値」と「稼ぐ力の価値」の両面から見られるということです。過去に積み上げた財産と、これから生み出す利益の両方が評価の対象になります。

純資産をベースにする考え方

一つ目の柱が、会社が持つ純資産をもとにする考え方です。資産から負債を差し引いた正味の財産を評価の出発点にします。整備工場であれば、土地・建物・設備・工具・在庫などが資産に含まれます。

ただし、帳簿上の数字がそのまま使われるとは限りません。土地や設備の時価、回収の難しい債権、退職金などの見えない負債などを反映し、実態に即した純資産に修正して評価するのが一般的です。

のれん(営業権)という考え方

純資産だけでは、会社の本当の価値は測りきれません。長年築いた顧客基盤、地域での信頼、技術力、優秀な人材といった目に見えない強みは、帳簿には載らないからです。こうした無形の価値を「のれん(営業権)」と呼びます。

のれんは、その会社が今後どれだけ利益を生み出せるかに着目して評価されます。安定して利益を出している会社ほど、のれんが厚く評価されやすくなります。純資産にのれんを加えて企業価値を考えるのが、中小M&Aでよく用いられる発想です。

稼ぐ力に注目する評価

のれんの評価では、会社の利益水準が重視されます。ここで使われることが多いのが、営業利益に減価償却費などを加え戻した、いわゆる実質的な稼ぐ力を示す指標です。

この稼ぐ力に、一定の年数分を掛け合わせてのれんを見積もる、という考え方が広く知られています。ただし、掛ける年数や具体的な計算は案件ごとに大きく異なり、決まった相場があるわけではありません。あくまで考え方の一例として捉えてください。

整備・販売業ならではの評価ポイント

自動車アフター業界では、一般的な評価に加えて、業界特有の要素が価値に影響します。買い手はこうしたポイントを重視して評価します。

  • 指定・認証といった許認可の有無と維持状況
  • 車検・整備のリピートによる安定収益
  • 立地や商圏、地域での知名度
  • 整備士など技術人材の層の厚さ
  • 設備の新しさとADAS・電動車への対応力

評価を押し下げる要因に注意

逆に、企業価値を下げてしまう要因もあります。事前に把握し、可能な範囲で解消しておくことが大切です。

  • 特定の人に依存した属人的な経営
  • 会社と個人の資産・経理の混在
  • 簿外債務や不明確な取引
  • 老朽化した設備や更新の先送り

相場は個別性が高い

「同業のA社がこの金額で売れたから、うちも同じくらい」という発想は禁物です。企業価値は、財務・収益・立地・人材・許認可・買い手の戦略など、多くの要素の組み合わせで決まります。まったく同じ会社は存在しないため、相場は個別性が非常に高いのです。

また、最終的な金額は評価額そのものではなく、売り手と買い手の交渉で決まります。評価の考え方はあくまで交渉の出発点である、と理解しておくとよいでしょう。

価値を高めてから臨む

企業価値は、承継やM&Aの前に高めておくことができます。財務を整え、属人化を解消し、収益力を強化する「磨き上げ」に取り組むことで、評価が変わる可能性があります。

こうした取り組みには時間がかかるため、譲渡を意識し始めたら早めに着手することが、より良い条件での成約につながります。

専門家に評価を相談する

自社のおおよその価値を知りたいと思ったら、業界に詳しい専門家に相談するのが近道です。財務内容や事業の強みをもとに、現実的な評価の見通しや、価値を高める余地を客観的に示してもらえます。

私たちは自動車アフター業界に特化し、完全成功報酬でM&Aを支援しています。企業価値の相談は無料、秘密は厳守します。

まとめ

M&Aの企業価値は、純資産という財産の価値と、のれんという稼ぐ力の価値の両面から評価されるのが一般的です。整備・販売業では、許認可やリピート収益、人材といった業界特有の要素も重視されます。

相場は個別性が高く、断定はできません。だからこそ、事前に価値を高め、業界に通じた専門家とともに準備を進めることが、納得のいく承継への近道になります。