事業は取引先との関係の上に成り立つ
整備工場や中古車販売店の事業は、部品の仕入れ先、ディーラー、保険会社、外注先など、多くの取引先との関係によって支えられています。これらの関係が承継後も続くかどうかは、事業の継続に直結する重要な問題です。
買い手にとっても、引き継いだ後に主要な取引が途切れてしまえば、事業の価値が損なわれかねません。そのため、取引先との契約がどう引き継がれるかは、承継の重要な確認事項になります。
まずは、自社がどんな取引先とどのような契約を結んでいるのかを整理することが出発点です。
株式譲渡なら契約は原則引き継がれる
株式譲渡の形で会社を売却する場合、会社は法人としてそのまま存続します。取引先との契約は会社が当事者となっているため、原則としてそのまま引き継がれ、あらためて結び直す必要はありません。
これは株式譲渡の大きな利点の一つです。多くの契約を一つひとつ結び直す手間がかからず、事業を止めることなく引き継げます。取引先から見ても、契約の相手は変わらないため、取引を続けやすくなります。
ただし、契約の中に経営体制の変更に関する定めがある場合は、注意が必要です。
同意や通知が必要になる場合
契約の中には、経営体制が変わる際に取引先の同意や通知を求める条項が含まれていることがあります。こうした条項があると、株式譲渡であっても手続きが必要になる場合があります。
とくに、ディーラーとの契約や重要な仕入れ契約では、こうした定めが置かれていることがあります。事前に確認しておきたい主な点は次の通りです。
- 経営体制の変更に同意や通知を求める条項の有無
- 契約が特定の経営者を前提としていないか
- 更新や解約の条件
- 承継にあたって相手に説明が必要か
こうした条項を見落としたまま進めると、承継後に取引が続けられなくなる恐れがあります。早めの確認が欠かせません。
チェンジオブコントロール条項に注意
契約の中には、会社の経営権が移ることを理由に、相手が契約を見直したり解除したりできると定めた条項が置かれていることがあります。こうした条項は、承継の際にとくに注意して確認すべきものです。
この条項があると、株式譲渡によって経営権が移ったことをきっかけに、重要な取引が途切れてしまう可能性があります。事前に契約書を点検し、該当する条項があれば、相手への説明や同意の取得を計画に織り込んでおくことが大切です。
契約書の細かな条項の解釈は専門的な判断を要するため、専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
ディーラーとの関係を丁寧に扱う
ディーラーとの取引は、事業にとって重要な柱であることが多く、その関係を承継後も維持できるかは大きな関心事です。ディーラーとの契約には、経営体制の変更に関する定めが含まれていることもあります。
承継を進める際には、ディーラーとの関係を丁寧に扱い、必要に応じて事前に相談や説明を行うことが望ましい場合があります。良好な関係を保ちながら承継を進めることが、事業の安定した引き継ぎにつながります。信頼関係は一朝一夕には築けないため、引き継ぎにも配慮が求められます。
事業譲渡では契約の扱いが変わる
株式譲渡ではなく事業譲渡の形を取る場合、契約の扱いは大きく変わります。事業譲渡では、契約を一つひとつ引き継ぐために、取引先の同意を得て結び直す必要が生じることが一般的です。
そのため、取引先が多い場合は手続きに手間がかかります。どの承継の形を選ぶかによって契約の引き継ぎ方が変わるため、事業の実態に合った方法を選ぶことが大切です。この判断は専門的な検討を要するため、専門家と相談しながら進めるとよいでしょう。
承継前に契約を整理する手順
取引先との契約を円滑に引き継ぐには、承継前に契約を整理しておくことが有効です。次の手順で進めると、抜け漏れを防げます。
- 主要な取引先との契約を一覧にまとめる
- 経営体制の変更に関する条項を確認する
- 同意や通知が必要な契約を洗い出す
- 対応が必要な相手への進め方を検討する
- 専門家と一緒に手続きを計画する
この準備をしておくことで、承継後も取引を止めることなく、スムーズに事業を続けられます。
よくある質問
Q. 株式譲渡なら取引先への説明は不要ですか。 A. 原則として契約は引き継がれますが、契約に同意や通知を求める条項がある場合は対応が必要です。事前の確認が欠かせません。
Q. 取引先に承継を知られたくないのですが。 A. 情報の扱いには配慮が必要です。どの段階で誰に伝えるかを含め、専門家と相談しながら慎重に進めることをおすすめします。
Q. 契約書が手元にそろっていません。 A. まずは主要な取引先の契約から整理を始めれば十分です。所在の確認から一緒に進められます。
専門家と一緒に契約を点検する
取引先やディーラーとの契約の引き継ぎは、契約書の点検や相手との調整が必要で、専門的な判断を伴います。承継後も取引を止めないためには、業界の実務に詳しい専門家のサポートが役立ちます。
私たち株式会社フォーバル 自動車アフターマーケットチームは、自動車アフター業界に特化して事業承継やM&Aの相談を全国で承っています。相談は無料で、秘密厳守・オンライン面談にも対応しています。契約の点検から承継の準備まで、一つずつ一緒に進めます。
まとめ
取引先やディーラーとの契約は、株式譲渡であれば原則としてそのまま引き継がれます。ただし、契約の中に経営体制の変更に関する条項がある場合は、同意や通知といった手続きが必要になることがあります。とくにチェンジオブコントロール条項には注意が必要です。
事業譲渡の形では契約を結び直す必要が生じるなど、承継の形によって扱いが変わります。承継後も取引を止めないためには、事前に主要な契約を整理し、条項を確認しておくことが欠かせません。契約書の点検や相手との調整は専門的な判断を要するため、専門家と一緒に進めていきましょう。