なぜ相談前の資料準備が役立つのか
事業承継やM&Aの相談では、専門家が会社の状況を把握したうえで、選択肢や進め方を提案します。その際、会社の実態がわかる資料があると、話が具体的になり、的確なアドバイスを受けやすくなります。
逆に、資料がまったくない状態では、一般論の域を出にくくなります。資料は、相談の解像度を高めるための材料です。ただし、初回の相談ですべてを揃える必要はなく、揃う範囲で持参すれば十分です。
まず用意したい:決算書
最も重要なのが、直近数年分の決算書(貸借対照表・損益計算書など)です。会社の業績や財務の状況を示す基本資料であり、企業価値の検討や現状把握の出発点になります。
できれば3期分ほどあると、業績の推移が見え、より具体的な話ができます。税務申告書や勘定科目の内訳がわかる資料があれば、なお有用です。数字は会社の実態を映す鏡であり、承継・M&Aの検討では欠かせません。
会社の基本情報がわかる資料
会社の全体像を把握するための基本情報も役立ちます。次のような資料が挙げられます。
- 会社の概要(沿革・事業内容・拠点など)
- 登記事項証明書(会社の基本情報)
- 株主の構成がわかる資料
- 組織図や事業の体制がわかる資料
これらは、会社がどのような形態で、誰が株式を保有しているかを示すもので、承継のスキームを考えるうえで重要です。特に株主構成は、承継の進め方に直結します。
業界特有:許認可に関する資料
自動車整備業では、認証工場・指定工場(民間車検場)の許認可が事業の根幹に関わります。これらの許認可に関する資料は、承継・M&Aの検討で重要になります。
認証・指定の状況がわかる書類を整理しておくと、承継スキームの検討や、許認可の引き継ぎに関する論点整理がスムーズになります。詳細な手続きは管轄の運輸支局等で確認することになりますが、現状を示す資料は準備しておく価値があります。
従業員・人材に関する情報
整備・販売業では人材が重要な資産です。従業員に関する情報も、会社の実態を伝えるうえで役立ちます。
- 従業員数や年齢構成の概要
- 整備士など有資格者の状況
- おおまかな給与・待遇の体系
- 勤続年数や定着の状況
これらは、承継・M&Aの際に「人材がどう引き継がれるか」を考える基礎になります。個人情報の取り扱いには配慮しつつ、概要がわかる形で整理しておくとよいでしょう。
資産・契約に関する資料
会社が保有する資産や、結んでいる契約の情報も、実態把握に役立ちます。次のようなものが該当します。
- 不動産(自社所有か賃貸か、契約内容)
- 主要な設備(リフト・テスターなど)の状況
- 借入やリースの契約内容
- 主要な取引先・仕入先との取引状況
これらは、会社の財務状態や引き継ぎ時の論点を把握するために重要です。特に、不動産の所有形態や借入・保証の状況は、承継の進め方に大きく影響します。
顧客・取引に関する情報
顧客基盤や取引の状況も、会社の価値を示す重要な要素です。車検・整備で継続的に来店する顧客の状況や、取引先との関係がわかる情報があると、事業の安定性を伝えられます。
詳細な顧客リストは秘密保持の観点から慎重に扱う必要がありますが、顧客基盤の規模や取引の傾向がわかる概要は、相談時に役立ちます。地域密着の事業では、顧客との関係そのものが価値であることを意識しておきましょう。
資料が揃わなくても相談はできる
ここまで多くの資料を挙げましたが、初回の相談で全部を揃える必要はありません。むしろ、揃わないからと相談を先延ばしにするほうが、機会を逃すことになります。
まずは手元にある決算書だけでも持って相談を始めることで、その後どんな資料を整理すべきかも見えてきます。準備は相談と並行して進めればよいのです。
秘密保持への配慮
会社の資料には、決算数値や顧客情報など、機密性の高いものが含まれます。相談の際は、秘密保持がしっかりしている相手を選ぶことが大切です。
信頼できる専門家であれば、秘密保持契約(NDA)を結んだうえで資料を扱います。東京証券取引所スタンダード市場上場企業のように、上場企業として求められる水準の情報管理体制のもとで相談できる相手であれば、安心して資料を共有できます。
まとめ
事業承継・M&Aの相談前には、決算書を中心に、会社の基本情報、許認可、従業員、資産・契約、顧客に関する資料を整理しておくと、話が具体的になり的確なアドバイスを受けやすくなります。
ただし、すべてを揃えてから相談する必要はありません。手元にある資料から始め、準備は相談と並行して進めれば十分です。機密性の高い資料を扱うため、秘密保持が徹底された信頼できる相手に相談することをおすすめします。