整備士不足に王道の解決策はない
整備士の不足は、業界全体が抱える構造的な課題です。なり手が減り、人材の取り合いが激しくなるなかで、一つの施策だけで一気に解決する魔法のような方法は存在しません。
だからこそ大切なのは、複数の打ち手を組み合わせ、自社の状況に応じて優先順位をつけることです。焦って手当たり次第に動くより、まず全体を見渡して、どこにテコを入れるかを考えることが成果への近道になります。限られた経営資源を、どこに集中させるかの見極めが問われます。
打ち手は大きく三つに整理できる
整備士不足への対策は、突き詰めると次の三つの方向に分けられます。それぞれ性格が異なり、効き方も違います。
- 採用:新たに人を確保する
- 定着:いまいる人に長く働いてもらう
- 省人化:少ない人数でも回る仕組みをつくる
多くの工場は採用にばかり目を向けがちですが、実は定着や省人化のほうが効果的な場合もあります。三つをバランスよく捉えることが、まず必要です。人を「増やす」発想だけでなく、「辞めさせない」「少人数で回す」という発想も併せ持ちましょう。
採用にばかり頼る危うさ
人が足りないと聞くと、まず採用を強化しようと考えるのが自然です。しかし、採用は競争が激しく、時間もコストもかかるうえ、採っても定着しなければ穴埋めの繰り返しになります。
採用した人がすぐ辞める職場では、いくら採用に力を入れても、まるで穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。採用を考える前に、辞めない職場になっているかを見直すことが先決な場合もあります。採用だけに費用をかけ続けるのは、消耗の激しい戦い方です。
定着に力を入れる意味
いま働いている整備士に長く続けてもらうことは、採用よりも費用対効果が高いことが少なくありません。一人辞めれば、その穴を埋めるのに大きな労力がかかるからです。
定着に効く取り組み
- 頑張りが報われる評価と処遇にする
- 新人を放置しない指導体制をつくる
- 働きやすい環境や柔軟な働き方を整える
- 相談しやすい風通しのよい職場にする
定着は地味ですが、確実に効いてくる打ち手です。まずは足元を固めるという発想が大切です。今いる人を大切にすることが、結果として一番の人手不足対策になります。
省人化で人手不足の影響を和らげる
三つ目の打ち手が省人化、つまり少ない人数でも業務が回るようにする工夫です。人を増やすことだけが解決策ではありません。同じ人数でより多くをこなせれば、不足の影響を和らげられます。
作業の段取りを整えたり、無駄な手間を減らしたり、一人が複数の業務をこなせるようにしたりと、やれることは多くあります。設備やデジタルの活用も、負担を軽くする手段になります。人手不足を、業務を見直す機会と捉える発想が有効です。人が採れないなら、採れないなりに強くなる道もあるのです。
自社の優先順位を見極める手順
三つの打ち手のどこから手をつけるかは、自社の状況によって変わります。まずは現状を見つめ、どこに一番の課題があるかを見極めることから始めます。
- 離職の状況を確認し、定着に問題がないか見る
- 採用のしやすさと、かかる労力を把握する
- 業務に無駄や属人化がないかを点検する
- 一番効きそうな打ち手から着手する
- 効果を見ながら組み合わせを調整する
多くの場合、まず定着と省人化で足元を固め、そのうえで採用に取り組むという順番が現実的です。土台が崩れたまま採用を急いでも、成果は長続きしません。
三つの打ち手は組み合わせて効く
採用・定着・省人化は、どれか一つを選ぶものではなく、組み合わせてこそ力を発揮します。定着がよくなれば採用の負担が減り、省人化が進めば一人ひとりの余裕が生まれ、働きやすさが定着を後押しする、という好循環が生まれます。
大切なのは、自社の弱いところから優先して手を打ち、少しずつ全体を底上げしていくことです。一度に完璧を目指さず、続けられる範囲で積み重ねる姿勢が、じわじわと効いてきます。
人材の課題は会社の将来にも直結する
整備士不足への対応は、目先の人繰りの問題にとどまりません。人が確保でき、育ち、定着する会社は、将来にわたって事業を続けられる力を持っています。これは承継やM&Aの場面でも、安定した会社として評価される要素です。
逆に、特定の人に依存し、人が定着しない会社は、将来の見通しが立てにくいとみなされがちです。人材の課題に向き合うことは、日々の経営とともに、会社の将来の価値を守ることにもつながります。
まとめ
整備士不足に決定打はありませんが、採用・定着・省人化という三つの打ち手を、自社の状況に応じて優先順位をつけて組み合わせることで、確実に前進できます。多くの場合、まず定着と省人化で足元を固め、そのうえで採用に取り組むのが現実的です。
人材の課題は会社の将来を左右する重要なテーマであり、自社だけで抱え込むのは大変です。採用や定着、組織づくり、そして将来の承継まで見据えたご相談は、自動車アフター業界に詳しい私たちに、相談無料・秘密厳守でお寄せください。