最初に押さえる3つの原則

1. 後払いである

採択されても、すぐにお金が入るわけではありません。事業を実施し、支払いを済ませ、実績報告をして、確定検査を経てから入金されます。

その間、全額を自社で立て替える必要があります。補助金は後払いをご覧ください。

2. 全額は出ない

補助率が定められており、自己負担が必ず発生します。また、補助対象にならない経費もあります。

3. 目的に合わない投資はしない

「補助金があるから買う」は本末転倒です。必要な投資の時期を、公募に合わせる。この順序を守ってください。

ステップ1:自社に合う制度を探す

食品製造業が使いうる制度には、次のような系統があります。

目的制度の系統
設備投資による生産性向上ものづくり・生産性向上系
省力化・人手不足対応省力化投資系
事業承継・M&A事業承継・引継ぎ系
新分野への展開事業再構築・新事業系
販路開拓・小規模な取組小規模事業者向け
ITの導入IT導入系
雇用・人材育成雇用関係助成金
地域独自の支援都道府県・市区町村の制度

制度名と要件は年度ごとに変わります。食品製造業が使える補助金の種類で探し方を扱っています。

地域独自の制度を見落とさないでください。競争率が低く、要件も自社に合っていることがあります。

ステップ2:要件を確認する

公募要領で、次を必ず確認してください。

  • 対象となる事業者(従業員数、資本金、業種)
  • 対象となる経費(何が補助対象か)
  • 補助率と上限額
  • 事業の実施期間
  • 申請の期限
  • 採択後の義務(報告、財産の管理)

「対象となる経費」を読み違えると、想定より補助額が小さくなります。設置工事費、消費税、既存設備の撤去費などの扱いを確認してください。

ステップ3:事業計画を作る

採択の可否は、事業計画書の内容で決まります。

審査で見られる観点

  • 課題が具体的か(現状の数字で示されているか)
  • その課題が、この投資で解決するか
  • 効果が定量的に示されているか
  • 実現できる体制があるか
  • 資金の裏付けがあるか
  • 政策の目的に合致しているか

1番目と3番目が最も重要です。「生産性を上げたい」ではなく、「現在の歩留まりは◯%、投資により◯%に改善し、年間◯万円の効果」と書けるかどうかが分かれ目です。

そのためには、原価と稼働の数字が把握できていることが前提になります。事業計画書の書き方をご覧ください。

ステップ4:申請する

  • 電子申請が主流(アカウントの取得に時間がかかることがあります)
  • 必要書類を揃える(決算書、登記事項証明書、見積書など)
  • 認定経営革新等支援機関の確認が必要な場合がある
  • 締切間際は申請が集中し、システムが混み合う

電子申請用のアカウントは、早めに取得してください。取得に日数がかかり、締切に間に合わないことがあります。

つまずく場所は決まっている

手続きで起きる失敗は、ほとんどが次の6つのどれかです。いずれも事前に防げます。

起きやすい失敗いつ起きるか影響防ぎ方
交付決定の前に発注する採択の通知を受けた直後補助の対象外になる「採択」と「交付決定」を分けて理解する。通知書を確認してから発注
対象外の経費を計上する見積もりを取る段階想定より補助額が小さくなる設置工事費・消費税・撤去費の扱いを公募要領で確認
計画と違う設備を買う発注の段階対象外、または変更手続きが必要仕様が変わる場合は事前に事務局へ相談
相見積もりを取らない発注の段階価格の妥当性を示せない求められる場合があるため、原則として複数から取る
証拠書類が揃わない実績報告の段階報告が受理されない実施中から、支払いごとに書類を1か所に保管
つなぎ資金を用意していない支払いの段階採択されても実行できない申請の前に金融機関と相談しておく

最後の行が見落とされがちです。補助金は後払いなので、設備の代金は先に全額を支払う必要があります。採択されてから資金を探し始めると、実施期間に間に合わないことがあります。

ステップ5:採択後

ここからが本番です。手続きを誤ると、補助金が受け取れません。

やってはいけないこと

  • 交付決定の前に発注・契約する(対象外になります)
  • 計画と異なる設備を購入する(事前の変更手続きが必要)
  • 相見積もりを取らずに発注する(求められる場合があります)
  • 支払いの証拠を残さない(現金払いは避ける)

1番目が最も多い失敗です。「採択された」と「交付決定」は別です。交付決定の通知を受けてから発注してください。

見積もりの取り方

申請でも実績報告でも、見積もりの取り方が問われます。次の点を押さえてください。

  1. 仕様を先に決める:「同じ条件で」比べられるよう、能力・寸法・付帯工事の範囲を自社で定義してから依頼します。仕様がばらばらだと、価格の比較になりません。
  2. 複数から取る:制度によっては相見積もりが求められます。求められない場合でも、価格の妥当性を示す材料になります。
  3. 付帯費用を明示させる:搬入、据付、電気工事、既存設備の撤去、試運転。これらが含まれるかどうかで金額が変わります。補助の対象になるかどうかも、費目によって異なります。
  4. 有効期限を確認する:申請から交付決定、発注までに時間が空きます。期限が切れると取り直しになります。
  5. 納期を確認する:実施期間内に設置と支払いが完了しなければ対象外になります。納期の長い設備は特に注意が要ります。

⑤は近年とくに問題になりやすい部分です。納期が実施期間に収まるかを、見積もりの段階で確認してください。間に合わない可能性があるなら、その設備での申請を見送る判断もあります。

ステップ6:実績報告

事業が完了したら、期限内に実績報告を行います。

必要になる書類

  • 見積書、発注書、契約書
  • 納品書、検収書
  • 請求書
  • 振込の証拠(通帳の写しなど)
  • 設置状況の写真
  • 成果に関する報告

証拠書類は、事業の実施中から整理してください。後から集めるのは大変です。

ステップ7:入金後の義務

  • 一定期間の事業化状況の報告
  • 取得した財産の管理(一定期間は処分に承認が必要)
  • 収益が出た場合の納付(制度による)
  • 帳簿・書類の保管

2番目は承継・M&Aに影響します。補助金で取得した設備を、期間内に処分・譲渡する場合、手続きが必要になることがあります。M&Aを検討している場合は、事前に確認してください。

補助金で入れた設備と、承継の関係

採択後の義務として、取得した財産の管理があります。ここが承継やM&Aに直接関わります。

補助金で取得した設備は、一定期間、処分や譲渡に制限がかかるのが通常です。売却、廃棄、貸付、担保への提供などが対象になり、事前の承認が必要になることがあります。承認を経ずに処分すると、補助金の返還を求められる場合があります。

承継の場面では、次の点を確認してください。

  • 補助金で取得した設備が、どれで、いつ取得したものか
  • 処分の制限がかかる期間が、いつまでか
  • 検討しているスキームが「処分」に当たるか(株式譲渡では法人が変わらないため、扱いが異なることがあります)
  • 手続きが必要な場合、どこに、いつまでに申請するか

株式譲渡であれば設備の所有者である法人は変わりませんが、事業譲渡では設備そのものが移るため、確認が要ります。M&Aを検討している場合は、方式を決める前に事務局へ相談してください。

あわせて、補助金で取得した設備の一覧を作っておくと、承継の準備がそのまま進みます。取得年、制度名、金額、制限の期間。この4項目で足ります。

税務上の取扱い

補助金は原則として収益として課税の対象になります。設備投資に充てた場合でも、受け取った年度に課税されることがあります。

一定の場合に課税を繰り延べる制度(圧縮記帳)がありますが、要件があります。顧問税理士に必ず確認してください。設備投資の税制優遇をご覧ください。

つなぎ資金の考え方

後払いという性質から、次の期間は自社で資金を持つ必要があります。

  • 設備の支払いから、実績報告まで
  • 実績報告から、確定検査を経て入金まで

この期間がどれくらいになるかは制度によって異なりますが、数か月単位で見ておくのが安全です。手元資金で賄えない場合は、金融機関に相談します。補助金の交付決定通知を示せば、返済の見通しが立つ資金として扱われるのが通常です。

相談の時期は、申請の前です。採択されてからでは、審査に時間がかかり実施期間を圧迫します。申請の段階で「採択された場合、この時期にこれだけの資金が必要になる」と伝えておけば、準備が進みます。

あわせて、季節による資金の波も見てください。食品製造業では、繁忙期の前に原料の仕入れが増えます。その時期と設備の支払いが重なると、資金繰りが厳しくなります。投資の時期を決めるとき、資金の山と重ならないかを確認してください。

相談先

  • 認定経営革新等支援機関(金融機関、税理士、商工会議所など)
  • 商工会議所・商工会
  • 都道府県の産業支援機関
  • よろず支援拠点

申請支援を有償で行う事業者もあります。報酬の体系(着手金、成功報酬の率)を事前に確認してください。

まず何をするか

設備の年表を作ってください。いつ何を更新する必要があるかが分かれば、公募の時期に合わせて計画を立てられます。

設備の寿命から逆算すると老朽化した工場・設備をどう引き継ぐかをご覧ください。

よくある質問

Q. 採択されれば、必ず補助金を受け取れますか。 A. 採択は「申請が認められた」段階で、その後に交付決定、事業の実施、実績報告、確定検査があります。手続きを誤ると受け取れないことがあります。最も多いのは、交付決定の前に発注してしまう失敗です。

Q. 申請の支援を外部に頼むべきですか。 A. 現状の数字と課題を整理する部分は、経営者や現場でなければ書けません。制度の要件に合わせて形を整える部分は、支援機関や専門家の力を借りるのが現実的です。報酬の体系(着手金、成功報酬の率)は事前に確認してください。

Q. 不採択だった場合、再申請できますか。 A. 制度によりますが、可能な場合があります。重要なのは、内容を見直すことです。現状の数字が足りなかったのか、投資と課題の結びつきが弱かったのか、効果の根拠が示せていなかったのか。同じ計画を出し直しても結果は変わりにくいと考えてください。

Q. 申請から入金まで、どのくらいかかりますか。 A. 制度によって異なりますが、申請、採択、交付決定、事業の実施、実績報告、確定検査、入金という順で進むため、年単位になることもあります。この期間、設備の代金は自社で立て替えたままになります。資金計画は、入金の時期ではなく支払いの時期を起点に組んでください。

Q. 補助金は税金がかかりますか。 A. 原則として収益として課税の対象になります。設備投資に充てた場合でも、受け取った年度に課税されることがあります。課税を繰り延べる制度もありますが要件があるため、顧問税理士に必ず確認してください。

Q. 複数の制度を同じ設備に使えますか。 A. 重複して受けられないのが原則です。制度ごとに他の補助金との併用に関する定めがあるため、公募要領で確認してください。同じ設備に重ねるのではなく、投資の内容ごとに使い分けると考えるほうが現実的です。

Q. 地域の制度は、どこで探せばよいですか。 A. 都道府県や市区町村の産業振興の窓口、商工会・商工会議所が入口になります。国の制度より競争率が低く、要件が自社に合っていることもあります。国の制度だけを見て「使えるものがない」と判断しないようにしてください。

※ 補助金・税制優遇の制度名、要件、補助率、公募時期は年度ごとに変わります。本記事は一般的な考え方を整理したものです。実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認のうえ、認定経営革新等支援機関等の専門家にご相談ください。