まず滞留を見えるようにする

多くの会社で、滞留在庫が把握されていません。理由は単純で、入庫日が記録されていないからです。

今日からできることを挙げます。

  • 新しく登録する部品には、必ず入庫日を入れる
  • 既存の在庫は、分かる範囲で推定日を入れる
  • システムがあれば、在庫期間で並べ替えられるようにする
  • 紙で管理しているなら、月ごとに区分して置く

4番目は原始的ですが有効です。置き場を入庫月で分けるだけで、古い在庫が視覚的に分かります。

滞留の基準を決める

何か月動かなければ滞留と呼ぶのか。これは自社の実績から決めます。

過去の出庫データを見て、入庫から何か月以内に売れているかを確認してください。多くの部品が6か月以内に売れているなら、1年動かないものは今後も動きません。

部位によって変わります。

  • 需要の多い外装部品は、回転が速い
  • 特定車種の専用部品は、時間がかかる
  • 旧車の部品は、長期で売れることがある

群ごとに基準を設けてください。一律に決めると、実態と合わなくなります。

群ごとの基準の決め方

「何か月で滞留とするか」を一律に決めると、実態と合いません。群に分けて、それぞれ自社の出庫実績から決めます。

部品の群回転の傾向滞留と判定する目安の考え方
需要の多い外装部品回転が速い自社の実績で大半が売れる期間を基準にし、その2倍を超えたら滞留
機能部品(駆動・電装)車種と年式に左右される同じ車種群の出庫実績から期間を決める
特定車種の専用部品時間がかかる長めに取る。ただし在庫の点数に上限を設ける
旧車・希少車の部品長期で売れることがある期間ではなく、置き場の面積で上限を決める
消耗品・汎用品早く動くか、まったく動かない短く取る。動かなければ早期に値下げ

下2行の考え方が使いやすいところです。期間ではなく面積で上限を決めると、判断が単純になります。「この棚に収まる範囲まで」と決めておけば、新しく入れるときに古いものを出す判断が自動的に発生します。

処分すると何が起きるか

処分をためらう理由は、損失が出ることです。しかしその損失は、既に発生しています。処分は、それを帳簿に反映するだけです。

処分することで起きる良いことを挙げます。

① 場所が空く

空いた場所に、回転する在庫を置ける。または保管環境を改善できる。限られた屋根の下を、価値のあるものに使えます。

② 管理の手間が減る

棚卸の対象が減ります。探す時間が減ります。データの整理も楽になります。

③ 純資産が下がる

これが承継の場面で効きます。売れない在庫が帳簿に載っているだけで、自社株の評価額が膨らんでいることがあります。処分すれば評価が下がり、相続税や後継者の買取負担が軽くなります。

④ 買い手からの評価が上がる

回転していない在庫は、買い手から見れば処分費です。先に処分しておけば、その分が価格から引かれません。

⑤ 現場の意識が変わる

処分の量と費用を現場に共有すると、「取る」判断が変わります。後で捨てることになると分かれば、最初から取らなくなります。

決算への影響を平準化する

一度に大量に処分すると、その期の損益が大きく崩れます。金融機関との関係にも影響します。

実務としては、数年に分けて進めてください。

  1. 1年目:最も古い層、明らかに売れないものから。全体の一部を処分。
  2. 2年目:次の層。同時に、新たに滞留化するものを減らす取り組みを始める。
  3. 3年目:残りを処理。基準に沿った運用を定着させる。

並行して、そもそも滞留させない仕組みを作ってください。取る基準を絞る、データを整えて売れやすくする、値下げの判断を早くする。処分だけを繰り返しても根本は変わりません。

処分の前に試すこと

捨てる前に、収益に変える方法があります。

  • 値下げして売る:段階的に下げる基準を決める。半年で1割、1年で3割、など。
  • まとめて売る:同業者や部品商に一括で引き取ってもらう。
  • 海外に出す:国内で動かないものが売れる場合があります。
  • 素材として出す:金属部分は、スクラップとしての価値があります。

1番目を仕組みにしてください。値下げの判断が社長の気分で決まっていると、いつまでも下げられません。期間で自動的に下がる仕組みにすれば、迷いがなくなります。

4番目も忘れないでください。処分費を払って捨てるのではなく、素材として売れる部分を分ければ、収支が変わります。

棚卸と同時に進める

効率的な進め方があります。棚卸のときに、滞留の判定も一緒に行うのです。

  • 棚卸で在庫を確認する
  • その場で、入庫日と状態を見る
  • 滞留と判定したものに印を付ける
  • 棚卸の後、まとめて処分の判断をする

棚卸は手間のかかる作業です。どうせ全部見るなら、判定も同時にやってしまうほうが効率的です。

そして処分すれば、次の棚卸が楽になります。この循環に入れるかどうかが分かれ目です。

よくある質問

Q. 入庫日が記録されていない在庫は、どう扱えばよいですか。 A. 分かる範囲で推定日を入れ、判断がつかないものは「不明」として1つの群にまとめてください。不明の群は、置き場の面積で上限を決めて管理するのが現実的です。全部を遡って正確にするより、今日から入れる分を確実に記録するほうが早く効きます。

Q. 処分すると赤字になります。それでも進めるべきですか。 A. 損失は既に発生していて、処分は帳簿に反映するだけです。とはいえ一度に出すと損益が崩れるため、数年に分けて進めます。金融機関には、滞留の処分であることと今後の運用を先に説明しておくと、受け止め方が変わります。

Q. 承継の前に処分すると、純資産が減って評価が下がりませんか。 A. 帳簿上の純資産は下がりますが、買い手は在庫を実勢に置き直して評価します。売れない在庫は、そのままでも評価されないうえ、処分費として差し引かれます。先に処分しておくほうが、手元に残る額は増えることが多いと考えてください。

Q. 滞留させない仕組みは、何から始めればよいですか。 A. 値下げの基準を期間で決めることです。「半年で1割、1年で3割」のように自動的に下がる形にすると、判断に迷いがなくなります。あわせて、取る段階の基準を絞ってください。後で処分することになると分かれば、最初から取らない判断ができます。

処分の実務

いざ処分すると決めたときの進め方です。

  1. 対象を確定する:リストにして、点数と帳簿価額を出す。
  2. 素材として分ける:金属部分はスクラップとして売れます。樹脂やゴムは処理費が発生します。
  3. 処理費を見積もる:委託先に確認し、費用を把握する。
  4. 税理士に相談する:評価損の計上時期と、決算への影響。
  5. 実施し、記録を残す:処分した点数、帳簿価額、実際の収支。

2番目を丁寧にやると、収支が変わります。すべてを処理費を払って捨てるのではなく、分けられるものは売るという手順です。

5番目の記録が次に効きます。「処分に○円かかった」という数字を現場に共有すれば、取る判断が変わります。

※ 在庫の評価損の計上や税務上の取り扱いは、税理士等の専門家にご確認ください。